「Kilometro Rosso」
少年時代にはじめて買ったイタリア製のモーターサイクル。当然のことのように多くをイタリア製のパーツで構成されていました。そのひとつずつのパーツに打たれた刻印が特に印象的で、そのアルミニウムのつややかな質感に少年の心は奪われてゆきます。
そのなかでも特に「真綿で締めるような」と喩えられるブレーキには何度もため息をつき、何度かはクラッシュから命を助けられたものでした。それこそはブレンボというメーカーです。
その当時もそのブレンボというブレーキは、ブランディングが成功していたのでしょう。遠く離れた極東の小島でも、仲間の誰もが自分で充分体感したのではないでしょうに「ブレーキはブレンボが最高だ」と異口同音なのです。つまりこれも「神話」だといえます。
やがてデザインの世界を窺い知るようになると、いつもイタリアンデザインと究極のブレーキの感触を思い出すことがしばしば。
ジャン・ヌーベルという建築家がいます。そう電通の汐留本社の設計も担当したフランス人、64歳。そのジャン・ヌーベルのイタリア・デビュー作が「ブレンボ研究&開発センター」だということを聞いていました。それは自身が提案していた「キロメートル・ロッソ・サイエンス&テクノロジー・パーク」の一番乗りの建物になりました。
昨年オートバイでイタリアを旅した時に、何とかこの赤い壁が見たいものだと考えていましたが、この1キロに及ぶ赤い壁はミラノ-ヴェニスA4アウトストラーダ沿いでした。
そういえばアウトバーンでは、BOSCHの大きな看板のような建物(ステージ・シーン)に驚かされましたが、こちらの“キロメートル・ロッソ”と呼ばれる押出し成形アルミによるイタリアンレッドの建築的ステージ・シーンのほうが遥かにインパクトに満ちています。
特にブレンボ社だけが入居するわけではないので、ブレンボの赤と見てしまうのは問題です。しかし記述を見るとブレンボ社の要望はこの赤い壁に反映されてるようです。
長さ1kmの建築物のスケールを越えた赤い壁は、このサイエンス&テクノロジー・パークに入居する企業に強いアイデンティティーを与えることになります。まあイタリアの企業ならどこでも大喜びでしょう。残念ながら日本にはこうしたアイデンティティカラーを作り出そうという運動がありません。
赤いアルミの高さ10mの壁はアウトストラーダに1kmも横たわり、内部の緑溢れるパーク内とは完全な対象をなしています。
「ブレンボ研究&開発センター」は、「サイエンス・パーク」内に11000平米の建築面積を有しています。その卓抜した建築物もいずれまたご紹介しますし、いまの発達したWeb環境のことですから、そこまでしなくてもかも。
とまれ、あの時のイタリアンに恋した少年も、いまはもう初老の頃。それでも未だに40年近く燦然と輝き続ける「ブレンボ」ブランド。どのような弛まぬ経営があったのでしょうか。
あなたのクルマのブレーキも「ブレンボ製」ではありませんか。
No.012 09/03/19
Creative Director
山田 徹 Yamada Tetsu 株式会社グローブコンペティション代表取締役
最近(2008年4月)事務所を郊外に移転しました。そこは趣味のラリーマシン製造のために田舎に所有していた鎮守の森の前にある自動車工場を大改造して制作。本来デザイナーの腕としては自信がある?ものの今回は「原則として廃材や貰い物で、作る。図面は引かない!行き当たりばったりで作る」というコンセプト。友人の世界的建築家の有馬裕之氏も「・・・・」と大納得?の新オフィスで、いまだ未完成の部分をどうしようかと悩んでいるようです。その有馬氏は、ここにリエゾンオフィスを置こうかと思案中とのこと。特に表に向けて閉鎖的、裏に向けて開放的!!?な事務所。来る人を阻み、来た人を快適に、が特徴だそう。
1階はベランダ部分が主な打ち合わせスペースですが、目の前はすぐ鬱蒼とした森。ベランダからはすぐに小径があり、鎮守の森の散歩が出来ます。またこの森は特に小鳥が多く、午前中は素晴らしい鳥の鳴き声で至福の時間が得られます。椅子は本人がコレクターだというだけあって、ものすごくたくさんあります。今度はデザイナーや建築家と林業関係者らとのコラボレーションで「木の椅子」を展開するプロジェクトも進んでいます。さらにはツリーハウス・プロジェクトは、都市と中山間の交流促進と、ただの遊び場ほしさの提案が進んでいます。さらに四国八十八カ所にならった?小さな山の中のトレイルを作ろうと考えているようです。
基本的には読書が趣味ですが、1年のうちの半分近くを旅と読書で過ごしています。クリエイティヴディレクター、コピーライター。時々イラストも描きます。環境問題は25年前から積極的だったのですが「最近はヒステリックな温暖化原理主義はいかがか?」と思案中。環境に特化した地域のフリーマガジンを計画中!なのですが、「環境問題はなにが問題なのか」みたいな切り口ではじめたいらしいので、しばらくしたらこのウェブサイトでも事後報告が出来るかもしれません。どうぞこれからもよろしくお願いします。
09/03/03