「Mama Shelter & Philippe Starck」
1年前の3月フィリップ・スタルク(Philippe Starck)が、「デザインの仕事に嫌気が差し、2年以内にリタイアする予定だ」とドイツの週刊誌「Die Zeit」のインタビューで語った。ちょっと機嫌が悪かったに違いないと思うが、話の続きとしては「私がデザインしたもの全ては不必要だった。2年以内には確実にリタイアし、何か他のことをやりたい。まだそれが何かはわからないけど。自分を表現する別の手段を見つけたい。デザインとは、忌むべき表現形式だ」と、なんとも激しい。そして「今後デザイナーはいなくなるだろう。将来のデザイナーは、パーソナルコーチや、ジムのトレーナー、ダイエットコンサルタントになるんだよ」80年代、わたしたちはスタルクの登場に驚いたものでした。某ビール会社のビルのプレゼン手法などは、誠に軽妙で鮮やか。やはりスタルク以前とスタルク以降と分けられるのではないかと思うほどです。インタビューの最後にスタルクが現在唯一愛着を持っているものは「枕と、良いマットレスだよ。」ということ。これは何かのメッセージと読み解くしかないでしょう。
と思っていたらこの春「ホテルママ・シェルター・パリ」がオープン。もちろんデザインはスタルク。地中海クラブの共同設立者であるトリガノ一族と哲学者のシリル・アウイゼラトのコンセプト。フランス政府の公式ガイドから抜粋
花盛りのカフェのテラスや公園があり、今なお反骨の精神が息づくサン・ブレーズ地区、ママ・シェルターは、そんな本物のパリが香る町並みの中にあります。芸術家たちのアトリエやパリの田園と名づけられた住宅街の間にある石畳の小道を歩けば、エディット・ピアフやバルバラ、ジム・モリソンの面影が目に浮かびます。パリの20区の中心に位置するバニョレ通り109番地。それがママ・シェルターのアドレスです。正面には、伝説のライブ・ハウス「フレッシュ・ドール」があります。ポルト・ド・バニョレで環状線から直接アクセスでき、シャルル・ド・ゴール国際空港からは25キロ。オルリー空港からも20キロ。ガンベッタ広場へは600メートル。ブラッスリーや映画館、ペール・ラシェーズ墓地、ピクニックのできる公園もすぐ近くです。ママ・シェルターは、世界都市パリの入り口なのです。
1階には、アラン・サンドランスのシンプルな料理が味わえるカジュアル・レストラン、巨大なバー「シック・シック・バー」、プライベート・テラスのあるブラッスリーがあり、アメリカの詩人や日本の画家、ラテン・アメリカの作家と出会えるかもしれません。それでいて、内装は決してデザイン優先ではなく、あくまでシンプルで機能的で、ちょっとした心遣いがいっぱい、それを発見するのはあなたです。さあ、赤々と燃え続ける暖炉のそばでソファーに腰を落ち着けましょう。この共用スペースの高い天井からは、まるで人類同士が抱擁しあうかのように腕を広げて喜びに満ちた顔の群集をモチーフにした巨大なカーテンが垂れ下がっています。反対側には、寒い冬も暑い夏もテラスで過ごしたい人や、喫煙タイムを楽しむ人のための広大なテラス・スペースがあります。
172室ある客室は快適かつ官能的で、サテン仕上げのコットン100%のシーツを敷いた5つ星ホテル並みのベッドが備えられ、まるで癒しの隠れ家のよう。電子レンジ、ミニバー、25インチのiMac(テレビ、ラジオ、CD/DVD、インターネット、無料無線LAN)、仕事をしたりラブ・レターを書くための机、機能的でエレガントなバス・ルームのほか、心憎いほどの設備が揃っています。
HOTEL MAMA SHELTER PARIS
109 Rue de Bagnolet, 75020 Paris
www.mamashelter.com
ということは1年前の「今興味があるのは、枕とマットレスだよ」とは睡眠不足のイライラか、このホテルに向けた最後のデザインの詰めに悩んでいたのかも。そのイライラのスタルクを癒すようなこのホテルで、あと1年で果たしてスタルクはどこへ向かうのでしょうか。なんとなく想像はつきますが。
そしてこのコンセプトから透けて見えるのは、大人の子供心。
そのオハナシの続きはまた。
No.013 09/03/27
Creative Director
山田 徹 Yamada Tetsu 株式会社グローブコンペティション代表取締役
最近(2008年4月)事務所を郊外に移転しました。そこは趣味のラリーマシン製造のために田舎に所有していた鎮守の森の前にある自動車工場を大改造して制作。本来デザイナーの腕としては自信がある?ものの今回は「原則として廃材や貰い物で、作る。図面は引かない!行き当たりばったりで作る」というコンセプト。友人の世界的建築家の有馬裕之氏も「・・・・」と大納得?の新オフィスで、いまだ未完成の部分をどうしようかと悩んでいるようです。その有馬氏は、ここにリエゾンオフィスを置こうかと思案中とのこと。特に表に向けて閉鎖的、裏に向けて開放的!!?な事務所。来る人を阻み、来た人を快適に、が特徴だそう。
1階はベランダ部分が主な打ち合わせスペースですが、目の前はすぐ鬱蒼とした森。ベランダからはすぐに小径があり、鎮守の森の散歩が出来ます。またこの森は特に小鳥が多く、午前中は素晴らしい鳥の鳴き声で至福の時間が得られます。椅子は本人がコレクターだというだけあって、ものすごくたくさんあります。今度はデザイナーや建築家と林業関係者らとのコラボレーションで「木の椅子」を展開するプロジェクトも進んでいます。さらにはツリーハウス・プロジェクトは、都市と中山間の交流促進と、ただの遊び場ほしさの提案が進んでいます。さらに四国八十八カ所にならった?小さな山の中のトレイルを作ろうと考えているようです。
基本的には読書が趣味ですが、1年のうちの半分近くを旅と読書で過ごしています。クリエイティヴディレクター、コピーライター。時々イラストも描きます。環境問題は25年前から積極的だったのですが「最近はヒステリックな温暖化原理主義はいかがか?」と思案中。環境に特化した地域のフリーマガジンを計画中!なのですが、「環境問題はなにが問題なのか」みたいな切り口ではじめたいらしいので、しばらくしたらこのウェブサイトでも事後報告が出来るかもしれません。どうぞこれからもよろしくお願いします。
09/03/03